top of page

第68回毎日書道展(毎日新聞社、毎日書道会主催)の漢字部門で、書道教室「抱山舎」を主宰する益田市久城町の寺井史明(しめい)さん(61)が会員賞を受賞した。全国で2200人を超える有資格者の会員から選ばれた26人の1人だ。受賞作品は論語から取った「思無邪」。還暦を過ぎ、「よこしまな思いを抱かず、純粋な気持ちで好きな書と向き合いたい」という思いを込めた。 

 昨年の毎日展出品作を書き上げた直後に、「来年はこれで行こう」と温めてきた3文字。中国の古典は書の素材の宝庫。若い頃から言葉としては知っていたが、年齢を重ねて心の底から出てくる言葉になったという。 

 6歳から両親の影響で書道を始め、31歳が転機になった。「筆一本で生きていこう」。大学卒業後に東京からUターンして勤めていた会社を辞め、抱山舎を開いた。公募展から数えて毎日書道展への出品が30回目の節目での会員賞。受賞を知らせる電報を受け取った夜は、喜びと責任感でなかなか寝付けなかったという。 

 書家としてのこれからの目標は、伝統の上に立ちながらも新しい書を生み出すこと。抱山舎に来る小学生らの中には、かつての教え子の子どもも多い。「2世が集まってくることが最もうれしい。底辺を広げ、伝承していくことが最大の使命だと思う」と指導者としても意欲を見せる。 

 会員になったのは2001年。「いつか会員賞をいただけるまでは」と願掛けし、書道関係の名刺を作ってこなかった。「やっと解禁です」と笑った。【横井信洋】 

bottom of page